続けてもいいから嘘は歌わないで

同人作家の同人以外の雑記が主です

東北3県旅行②〜サカナクションライブ編〜

旅の朝は早い。

6時に起き、朝風呂で脳に熱を与える。

これまた美味しい朝ごはんを頂いてから温泉郷の始発バスで宿を発った。向かうは田沢湖である。

流石に早朝だったからか湖畔にある立派な駐車場とレストランにはまだ人はおらず、出勤したての従業員が駐車場を掃除している。まぁ8時だし。田沢湖の観光は次のバスに乗るため1時間弱で終わらせる必要がある。といってもあるのは馬鹿でかい湖だけなのでとりあえず波打ち際に向かった。

朝の湖は穏やかなのか、周りを囲む山々が水面に反射して綺麗な線対称を作り出している。水もエメラルドグリーンでとても綺麗だ(語彙力がない)。そしてそれ以上に羽虫が飛び交っている。なんだこれは。朝だからなのか。基本的に数の暴力が嫌なので這々の体で逃げ出して、辺りを散策することにする。何もなかった。あまりに湖が広すぎてシンボル扱いの金色の像も二桁キロ先にあるのだ。景色はとても良いし朝の静寂は心地よかったがここは徒歩で見るところではない気がする。多分ツアーガイドさんがいれば話術で乗り切れるのだろうけど。

f:id:firstlot13:20190424223254j:plain

水面が山々を反射している

そんなことを思いつつ雄大な自然を眺めていると駅に向かうバスが来た。いそいそと乗り込み、田沢湖駅に着く。新幹線まで時間があったので辺りを散策し田舎を堪能した(こういうのが好きなのだ)。『我々はさらなる発展をしていく』と昭和半ばに書かれた石碑が立っているなんて、いいじゃないか。

そして駅に戻り、新幹線に飛び乗って盛岡に着く。盛岡では相変わらず何もしなかった。じゃじゃ麺を食べ、ドトールでブログを書いた(1日目あたり)。

そしてまた新幹線に乗り、向かうは仙台だ。サカナクションのライブである。付け焼き刃的にGooglePlay MUSICでアルバムを聴きながら仙台に着くと、そのままライブ物販へ向かった。

今まで行ったライブは全て物販がえらく混んでいるイメージだったが、今回は拍子抜けするほど簡単に買えた。お陰で隣のゼビオでキャンプ用品を漁る時間さえあった。悠長にこんなことをしているのは宿のチェックイン時間が意外と遅かった為で、なんやかんや時間を潰しチェックイン時間を少し過ぎた頃宿であるゲストハウスに到着した。ゲストハウスというと海外の旅行客向けの安宿であるが、日本人と同室になることも多い。そして今回はバッチリ外国人に囲まれていた。ドイツ人と二言三言英語を交わしたが、ヨーロッパ旅行でさえ話さなかった英語は錆びついておりとりあえず「外国は顔で語る文化があるから眉を動かせ」というインターネットインテリジェンスに従って眉を上下させることに専念した。向こうからしたら「俺はズンダが苦手だ」と表情豊かにいうヤバいやつだったに違いない。

と、まぁ無事物販で買ったTシャツ

とタオルを装備し、意気揚々とライブ会場に再び向かったのであった。

【ここから先はサカナクションのライブ1日目のネタバレ、セトリバレが存分に含まれている。】

 

とりあえずライブ全体の感想を先に書くと、どデカイダンスフロアがそこにあった。サカナクションはロックバンドではなくダンスミュージックバンドなのだ(今更?)。

今まで行ったライブは山下達郎であり、perfumeであり、アイマスである。山下達郎アイマスは少しライブの王道とは外れている(山下達郎はおそらく客の年齢に配慮があるし、おそらくアイマスもそのうちそうなる)ので近しいのはperfumeだろうか。オルスタだし。めっちゃ踊るし。

だがライブの序盤は完全にロックバンドのそれだった。アルクアラウンド から始まり陽炎でしめる一連の流れは最初からボルテージをマックスにさせるにふさわしい。

そしてこの辺から6.1サラウンドだとか映像の美しさ、演出のヤバさが浮き上がっていく。いや、序盤からだいぶやばかったけどね。始まり方かっこよすぎる。

 

特に感動したのがyearsでの演出だ。もともとサカナクションの中でもトップクラスに好きな曲だったが、スクリーンに映し出される映像と歌詞のシンクロ、震えながら重なり合う立体に場内を切り裂くレーザー光線の鮮やかさが世界観を完全に表していた。

また、ユリイカでの前面のスクリーンに故郷を、背後のスクリーンに東京を映す演出なんて憎いではないか。

曲の節目節目に「踊ろう!」と山口一郎が呼びかける。moonで宙に浮いたメンバーが光を受けながら横に揺れている状況なんぞなんというか、完璧だった。心の底から踊るしかない。かと思えばアイデンティティ新宝島などのロックチューンで観客を縦にノらせていく。縦横無尽なセットリストはタイプの違う熱をハコに対流させ、見事な潮目を作り出していた。

目玉である6.1サラウンドも、体感するとこれ無しではいられなくなる。諸手を挙げてノっている身体に音の塊がぶつかってくる感覚は何者にも変えがたい。広すぎない会場だったのが良かったのだろうか。

そして最後のグッドバイで、エンドロールが流れる。これはショーでエンターテイメントなのだ。強烈なオレンジの光に照らされたメンバーの影は、世界の端っこのように寂寥に満ち、かつ悠然として見えた。

ひっくるめるととても良かった。ライブとインタラクティブアートの中間を彷徨うような、ライブ体験の1つの先鋭化された頂点にあるものなのだろう。

会場を出ると4月とは言え肌寒い風が吹いている。北の杜仙台だけはある。さらにこっちはさっきまで無心に踊っていたのだ。Tシャツを肌に張り付かせていた汗が気化し体温を奪っていく。とりあえず最寄り駅に向かう集団を抜け、歩いていける距離の銭湯を目指した。住宅街の中に佇む小さな銭湯だ。ライブ終わりだからだれかしら目星をつけているだろうと思っていたが、中にいたのは明らかな常連さんばかりだった。とりあえずシャワーと風呂で汗を流す。こういういかにも昔ながらの銭湯(見たことないカランだった)も温泉とは違っていいものだ。

サクッと風呂をあがり、待合室でぼーっとしながらTwitterで検索をかけてみる。あまり感想は出てこなかった。探し方が下手なのかもしれないし、むしろインスタで写真付きでアップしている人が多いのかもしれない。アイマスに慣れた身としてはライブ会場で自撮りする人々は全員コスプレイヤーに見えるわけで自分の居る環境のいびつさを感じた。

 

銭湯を離れ、さすがに空いた電車で(それでも何人かライブ帰りと思しき人がいた)宿まで帰る。途中で飯を、あわよくば牛タンを食べようと思っていたが地方都市の9時半過ぎというのは東京の23時半に匹敵する店のまばらさだ。何回行ってもここの時間を読み間違えている気がする。適当な店でラーメンを食べて帰った。ゲストハウスではなにやら併設されたバーが盛り上がっていたが連日の旅の疲れと明日の早さも考慮して就寝した。