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3400円でワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドを見た

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドを見た。しかもグランドサンシャインのめちゃデカIMAXでである。そしてプレミアムシートでだ。1500円追加で結局3400円で映画を見たことになる。

もしこれからめちゃデカIMAXに行く人がいたら、とにかく上の席を取れと言える。下はだめだ。もしおでこに目があって縦の視野角が広いならいいけど。というかベスポジでも草食動物の視野角がスクリーンを見切るには必要なので、諦めてほしい。

そして話はプレミアムシートだが、ここはフカフカで勝つリクライニングが可能なシートだ。正直良かった。思いっきりリクライニングしないとまともに画面が見きれない。今回3時間映画見て疲れなかったし。値段と釣り合うかはわからないが、こだわりの映画を見たくてかつ興味があるなら試してもいいと思う。

 

(この下にはワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドのネタバレが含まれています。視聴済みの人向けです)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドは救いの映画だった。

映画の中でヒトラーを焼き殺したタランティーノなので、史実であるシャロンテート事件をどう扱うか、というのはキモだったと思う。結果としてシャロン・テートは生き残った。ヒッピーによる凄惨な事件は起きず、(かなりエグい)返り討ちにあったのだった。

そして映画のもう一つのキモはディカプリオとブラピ演じる架空の人物である。落ち目の俳優リック・ダルトンとそのスタントマンクリフ・ブース。その非実在のキャラクタは映画を象徴している。映画(ワンス〜の劇中劇)の中でダルトンはかつての栄光のため、そして今の栄光の影として「悪役」としての役割を求められそれを果たすばかりだった。それを悩み酒を飲み、演技に支障をきたし、恥をかく。そんな負のスパイラルを断ち切るきっかけになったのが幼い女の子というのが良い。こまっしゃくれたと言ってしまえばそれまでなのだけど(彼女に言わせれば)俳優という職業の中でその思想は真っ当であるし、真っ当だからこそダルトンは同業者のものとしてその言葉を受け止め、酒を(少し飲んでから)棄て、最高の演技を見せた。それを彼女は正当に評価する。経験とかしがらみとかのないクリーンで対等な関係がそこに生まれていたのだ。尊い

 

シャロンはどうだろう。彼女は若く、自分の可能性を信じているように思う。彼女が自分の出演する映画を観に映画館に入るシークエンスはとても良かった。ネットに渦巻く自己肯定感とかそんな言葉を吹き飛ばすような、自分を知っているか係員に聞く表情である。知られている喜びは「私のファン?」なんてことは言わせない。あそこで撮られた写真のことをシャロンは一生覚えているのかも……。そして自分の出演シーンで観客が笑い驚く様を見る彼女は一挙手一投足がチャーミングだ。正直主演でもなく、なんか雑なお色気要員として出ている気がしなくもないが、それでも彼女は仕事でその役をやりきり、人を笑わせている。その矜持を強く感じたシーンだった。新人のシャロンとそれが一周したダルトンそれぞれが違う方法で同じことを思っているのだ。

 

クリフはどうだろうか。いまやすっかりダルトンのお手伝いとして仕事をしておりスタントマンとしてはあまり活動していない。キャスティングを決めるおえらいさんにも好かれず悪い噂が先行している(この噂の真偽は不明だが挿入されるシーンを見るに同情の余地はあるようだ)。そんな彼はダルトンの「友達以上、妻未満」としての役割を任せられている。すっかり落ちぶれたダルトン内助の功で支え、友人として、同業者として褒め(FBIを見るシーンの楽しさ!)、家に帰ればトレーラーハウスで犬と暮らしている。彼の矜持は最後、ヒッピーを殴り殺しダルトンとの関係を永遠にかわりないことにすること(もちろん別れの晩に泥酔することでも彼らは変わらなかったかも知れない。今後酒の席で話せるネタが増えるだけかも知れない)だった。

 

最後、ダルトンは冗談で言っていたポランスキー夫妻のパーティーに本当に招かれることになる。これが彼の、フランスから始まる華々しい復活劇の火口になるかはわからない。でもきっとそれはそうなんだろうし、だからこのタイトルは「昔々、ハリウッドで…」なのだ。

 

このように話はとても好みだったし、ヒッピーの娘はエロかったし、悪役は広がって歩くし、何より街がかっこよかった。これはタランティーノのこだわりだろう。あの猥雑な感じ、最高である。ダラダラ酒を飲みたくなる映画だった。