職場を飛び出し駅へ急ぐ。悠々と退社して券売機に並ぶつもりが社会が襲ってきてギリギリ。走りに走って券売機にかじりつくも、モバイルSuicaでは献杯機は使えないらしい。有人窓口で7分後に出る新幹線の切符を購入。キオスクでかつサンドとお茶とビールを買い込み、新幹線に乗り込む。席を探しているうちに新幹線が走り出す。一息ついてパソコンにかじりつき申し送りをしているとあっという間に小田原。あと六分で熱海だ。仕事を停止しぬるくなったビールでカツサンドを一切れ二切れ流し込むと熱海着。何が悲しくて東京とほぼ同じものを手に持って熱海に着かなきゃならないのか。熱海駅はかなり久しぶり。熱海駅から伊東線に乗り換える。隣の学生が外国の人に話しかけられていたがこの時間にこの場所でまだ人に尋ねるフェーズなのは流石に日本とはいえ危ない…のでは…という気持ち。伊東線は東海道線の中間なので普通にロングシートでビールとカツサンドを食べるヤバい人になる。駅の発車ベルが同じなのに全く景色が違うのが面白い。車窓は真っ暗。海の雰囲気だけ感じながらボーっとする。こういう電車が駅で停車して、扉が開いている時間は結構好き。扉の向こうに真っ暗な空間だけが見えていて、向こうからは音もしない。いつ閉じるのかも分からない絶妙な間。ずっと閉じなかったらと考えると怖い。車窓からサンハトヤとドンキが見える。ここに…ドンキ?
終点の伊東に着く。駅前には結構タクシーがいるが、無視して歩き出す。駅から続く細い道には飲み屋やスナックが軒を連ねているが営業している気配はない。人影はまばらだ。シンとした道を歩く。時々店の中からこもったカラオケの音が聞こえる。この感じ、今のところかなり自分の雰囲気に合っている。にこにこでアーケードを抜け、夜食にすき家を購入。旅先で牛丼を食べる自由もある。
宿に到着。現金決済かなと思ってお金を下ろしてきたけどクレカも使えて良かった。普段カプセルホテルを中心に活動をしているのでフロントが広いホテルはそれだけで嬉しい。うねうねと曲がる廊下を行き部屋へ。襖を開け和室に荷物を投げ入れる投宿の瞬間はいつだって最高だ。とりあえずすき家を食べ、雀魂をする。今のところカプセルホテルと全く同じ過ごし方。ただ過ごす空間が広縁ってだけだ。
お腹もいっぱいなので風呂へ。風呂が複数あるのでとりあえず内風呂へ。人がいない檜風呂で歌っちゃう。お湯は低温で長く浸かってられるやつ。流れで露天風呂へ。先客もいるが、その気持ちよさに気にせず声を漏らしてしまう。お湯がたゆたう音だけが聞こえる夜の温泉という空間。とりあえず社会のことは頭の隅に追いやり、周囲に落ちる影とか夜空の星とかそういう有機的な、そこに在るもののことを考える。いつもはそこに無いモノのことばかり考えているから。湯に肩まで浸かったり足だけ浸かったりを繰り返して温泉を堪能したのであがる。体重を量る。少し痩せた。部屋に戻る時スリッパが鳴る音が好き。宿内の自販機でポカリを定価で買う。富豪の遊びである。
部屋に戻りツイッターを見ないで雀魂をして緑一色をキメられる。やってられっか。歯を磨いて寝る。途中仕事のあれそれで起きる。イヤーッ
朝起きて、二度寝したら朝ごはんの時間を逃す。う〜〜〜〜仕方ない。切り替えてこ。朝風呂へ。朝の温泉で、湯けむりが差し込む朝日に照らされる様が好きだ。身体が暖まったので脱湯(温泉を出ることを一言で表したい)。身支度をして出立。宿の前にはツアーバスが泊まっていておじいちゃんおばあちゃんが大挙して乗り込んでいた。通りで平均年齢が高いわけである。伊東の街を歩く。風はなく意外と暖かい。やってなさそうなホテルを見ながら進むと途中で大きい和風建築にぶち当たった。しかし隣に南インド料理屋があり風情とはという気持ち。
ステーキガストの脇を抜け海に出る。穏やかな太平洋。砂浜には誰もいない。少し向こうから突き出した堤防の突端に釣り人が垂らす竿の先が見え隠れしている。引き潮なのか、まだ濡れている砂浜と波の境目を歩く。向こうにマックとドンキが見える。音はない。

特に何もないので駅の方向に引き返す。時々おばあちゃんが歩いている。そのまま伊東線に乗る。電車は混んでいて、たぶん宿から送迎で直に駅に来る人がたくさんいるのだろう。うつらうつらしていると熱海に着く。
熱海は人であふれていた。予想以上の人数にコインロッカーの確保にすら手間取る。海外の人もぞろぞろ歩いている。アーケードを歩いてみるが4.5年前に来た時とは店のラインナップが違う。名物っぽいスイーツの店が増えている。干物屋と練り物屋と昔ながらのお土産屋ばかりだったのに。とりあえず練り物を食べ、刺し身が食べられそうなとこを探す。狙っていたところは人手不足で刺し身がやっていなかった。悲しい。ふと10人弱人が並んでいる店に目がいき、並んでみる。海鮮丼あるじゃーんと思ってたらあれよあれよと言う間にちょうど開店となり店に入れる。ラッキー。店内は相席になるくらいに混んでいて目的の海鮮丼を頼む。後追いでGoogleマップのレビューを見るとおいしいけど丼の量は少なめとのこと。許すぜ。
いざ着丼。普通に量がある!!まさかレビュワーが大きいパターンとは思わないだろ。マグロと甘エビとブリ的なものとウニとイクラとエビとイカと……とにかくモリモリ食べる。しかも味噌汁にカニが入っている。ありがたいねぇ〜〜!完食。人生で最も良いことの一つは何気なく入った店のご飯が美味しいことだというがまさにそれであった。

大変満足してとりあえず海へ坂を下っていく。前は海へ抜ける細い階段がたくさんあったと思うのだけど今は再開発もあって昔ながらの道がなくなっている。おとなしく坂を下る途中には干物屋が始めた角打ちやちょっとモダンなお菓子屋などもあり新しいお店なんだろうと思う。観光客の流入は街を変えていくのだなぁ。あと昔ながらのお店もレトロブームなのか結構混んでいる。全体的にはいいことなのかな。海に出る。熱海の海といえば個人的にはあのジョナサンだ。海には伊東と違い人が割といる。犬もいる。海鳥が砂浜をとてとて歩いている。穏やかの一言。

海を見て満足したので道を戻る。さっき通りがかりに良さげな喫茶店があったんだよなと入店。まだ昼なので人は少なめ。古民家風の席に通されてさて何を頼むか。メニューにスコーンがあるとすぐスコーンを頼んでしまう。あとチャイ。
おいしそ〜。あとチャイがどんぶりで支給されるのが新鮮。甘くないけどしっかりスパイシー。これも穴場かも、と『センスの哲学』を再読しながらしばし休憩。

足の疲れも少しとれたので店を出る。立ち飲み屋などにも惹かれつつうろうろして気になる坂を上ってみると『來宮神社』というものがあるらしい。興味本位で行ってみることに。上り坂の過程で熱海を見下ろし景色を見る。こう見ると温泉街だな。來宮神社には結構人がいてオシャレなカフェも併設されていた。大楠は確かに立派なもので節くれ立った幹に異様な存在感があった。
そのまま駅に戻る。ちょうどいい時間なのでお土産にジュースとかを買って新幹線に乗り込み東京へ。東京駅に着いた時点で17時前。疲れすぎない小旅行として大変良かった。