スパイダーバースを見て、スクリーンを出たところで今からスパイダーバースを見る人達とすれ違った。その背中を見て思った。
「TCXで見れば良かった……」
スパイダーバースは二時間のスーパーグラフィカルストーリーでありハイパーモーショングラフィックスだ。高揚と快楽、思慮と耽溺のジェットコースターだ。つまり最高である。
基本創作物には加点方式で臨むので総合得点は200那由多を超えるのだけど、何が明確にいいのかというとやはりストーリーだろう。
スパイダーバース、という名に恥じない前設定。ピーターパーカーという存在を殺した後の人々の描写には、そこまでのフリークでない自分に刺さる物もあった。マイルスの思いも一辺倒でなく、日常の些細な(と思える)思春期の悩み、大いなる意志への向き合い方、全てがないまぜになった内面が挙動にも現れる豊かなモーションが、丁寧に積み上げられる全般を引っ張っていく。ここでもコミックを下敷きとしたグラフィックは多く使われているが、むしろ心境を反映したレイアウトの外さなさも光っている。
そして話が転がる中盤、ピーター・B・パーカーやグウェンダを柱としてノワール、ペニーパーカー、ピーターポーカーらスパイダーお祭りフェスティバルが開催されつつ、ここで立ち現れるのはヒーローを逆手に取った孤独故の共感だ。現実世界でも似通った悩みを抱える人達が強く結ばれる例はあるが、ヒーローのそれは比ではない。スパイダーセンスでの理解は痛みを共にするというものでもあり、そこには(実力的に)入れないマイルスはヴィジョンズと似ている。すでにあるコミュニティからの阻害を前に透明になってしまう心を、(自称)師であるピーター・B・パーカーは必死に繫ぎ止めようとする。グウェンダとのキーワードになる『友達』だが、Bパーカーにとってもマイルスは、弟子であり、バディだった。
そして後半は、めちゃんこな世界観の中で乱痴気バトルが繰り広げられる。ここはもう怒涛の伏線(というか構図)回収なのだけど、そんなことをやるのはわかりきっていても、最高だ。これが始まりの物語となるマイルスのスパイダーマンストーリーは素晴らしいものになるだろう……。
とか言っているが、個人的に、趣味でいうならやはり映像が神だった。これを見るために生きてきたと最初見た時本当に思った。カラースクリプトの巧みさ(ハイライトの入れ方!)スウィングの爽快感、ビルの落差を使った描き文字の演出。キメで敵味方関係なく出るコミック表現、完全に気持ちよくなってしまった。あとキャラ萌え。マイルスとBパーカーの師弟関係とグウェンダとの父母ネタ、ペニーパーカーのかわいさとノワールの天然ボケ、ポーカーの版権ネタ……コミコンでなくコミケで本を読みたい。マーベル盛んだもんなその辺。誰か頼む。
感想がまとまらないけどとても良かった。スパイダーバース、最高です。とりあえずみんな吹き替えで見て師弟に尊くなってほしい。IMAXの家の中のバトルも最高だしな!!ラストは言わずもがな!