続けてもいいから嘘は歌わないで

同人作家の同人以外の雑記が主です

SFが面白い

今週のお題「SFといえば」
SFは好きだ。ここ何年かの趣味のメインコンテンツと言ってもいい。それより前、学生の頃はSF読みたいな〜と思っていた。多分日本のSFというものがあまりわかっておらずなんとなく敷居が高く感じていたのだと思う。
それがどうだろうか?今なぜ俺の興味の中心にSFがあるのか?それはSFの「突破力」にあるんじゃないか。
言わずもがな現代において国単位で地域単位で信じられる「大きな物語」は存在しない。
様々な価値観や倫理観が唱えられその発露として行われる行動は千差万別。立場は流転し信条は移り変わる現代は分断というよりも全てがボーダレスな融解の時代だが、その現実をときに爽やかにときに愚直に突破する物語がSFには見られる。突破というのは難しいが…例えば閉塞感の中目にも留まらぬ速さで何かが目の前を横切る。それが何かは分からないが、それを追った俺の目線は今まで愚鈍に見つめていた真下ではなく明後日の方向に向けられる。その視点の転換を、物語自体の意味だけではなくそれを味わったあと異なった視座を獲得すること、それを今「突破力」と呼んでいる。
その突破の仕方は様々だ。緻密に積み上げられた理論で日常の裏を暴いたり、はたまた荒唐無稽な設定を持ち出して全く別個の世界を描きそこにひとつまみの現実を入れてみたり。手を変え品を変えSFは非現実的な物語を描き、読者に非現実的な目線を与えてくれる。それは素敵なことなのだ。
ウダウダ言ってないでおすすめを貼っておこう。それこそが最善だから。
「掃除と掃除用具の人類史」松崎有理(『異常論文(樋口恭介編)』収録)
www.hayakawabooks.com
『異常論文』から1編。日常を鮮やかに読み変える視点が素晴らしい。読みやすいのでおすすめ。
「人間たちの話」柞刈湯葉(『人間たちの話(柞刈湯葉)収録』)
www.hayakawa-online.co.jp
柞刈湯葉はかなり外れない作家だと思っていてこの短編集はどれも素晴らしいけど特にこの表題作は素晴らしい。俺はこういう話をSFにもとめている節があったんだと読み終わって気付かされるスケールのお話。このあとに『宇宙ラーメン重油味』を読まされるのもまたいい。
「死んだ恋人からの手紙」中井紀夫(『日本SFの臨界点-山の上の交響楽-(伴名練編)』収録)
www.hayakawabooks.com
これは表題作もいいのだけど最後の1編を。作中で語られる死生観、手紙というツール、SFのタイムワープの設定、3つが重なり合った素晴らしい短編。何度読んでも良い。

とりあえず短編を3つ挙げてみた。俺は結構SFは短編が入りやすいと思っていて一つは内包される物語の豊富さが理由だ。いっちゃあ数撃ちゃ当たりやすいジャンルだと思っている。さくっとみなさんもトライすることをおすすめする。そして願わくば天冥の標を全巻読んでください。