続けてもいいから嘘は歌わないで

同人作家の同人以外の雑記が主です

2/15日記(映画「パラサイト」感想)

パラサイトを見た。ミーハーなので。いや、TLで見かけていたのだけど、見る気力がなく……(同じ理由で見ていなかったシェイプ・オブ・ウォーターもやっと最近見た)。

結論、かなり面白かった。様々なエッセンス(監督個人のというのもあるだろうし映画ジャンルとしても)が詰め込まれ観客の感情を楽しいジェットコースターのように見事に操ってくる。画面(このために組んだセットらしくレイアウトが美しい)、音楽(序盤の潜入パートで毎回テーマ曲流れるの笑う)、そして演技。賞を獲ったという堅苦しさは(読み解こうとしなければそれほど)なく笑えて怖いエンタメだった。隣のカップルが口を押さえていた。

以下箇条書きだけど気になったところを書いておく。他の感想・考察ブログにならもっと色々整理された情報が書いてあると思う。あと動画。最近映画感想も動画が台頭しているらしい。見た事はないけど。

 

○移動

半地下に住んでいるという一家は常に下から移動する。金持ちは坂の上に住んでいるので地理的に仕方ないが、象徴的だ。確かに韓国って割と坂が多かった気がする。そして一家は中盤逃げる時、ひたすら階段を下に降りる。もちろん洪水の話に繋がるのもそうだし、それまでの饗宴が嘘のように下に降るのは心情的だ。豪雨は足元を下に向けて流れる。ついでだけど雨を心情の表現としてだけでなく実際の洪水に繋げて描くのスマートが過ぎる。逃げる一家の中で何を持ち出すかで人柄が描かれる(夫婦が仲睦まじい)し、トイレの喫煙シーンは最高にクールだ(タバコの意味はまだわからない)。そして金持ちはこの洪水なんて露知らず大気が綺麗になったなんて言ってパーティに興じる。雨の処理がスマートだよ!

金持ち一家は玄関からリビングまで上がってくる様に、上に登る(机の下に隠れた一家に気づかないのは下を見ないからという考察があり、なるほどー)。家自体シネスコサイズだからなのか横に広いレイアウトが多いし下に向けては動かない。地下室に行ったのも(描かれていないが)長女だけだ。長女、この点では二つの階層をつなぐ希望なのかも知れない。年上に惚れっぽいだけかも知れない。

ちなみに半地下家族が唯一上に立つのは長男が長女といちゃついてる時だけ、ホームパーティーを上から眺めるシーンだ。なんとなくこれは自問(ガラスに映る自分)だったり俯瞰の比喩として上にあるのでは。

○言葉

象徴的と言う言葉を長男は使いたがるが、最後の計画(貧乏一家の繰り返される計画がうまくいかない事と金持ち一家の事業がうまく行っているという対比は見出せるだろうか)は本人曰く具体的だと言っている。まぁ、美しいレイアウトだけど、具体的ではないな……。監督インタビューも見るに、多分実現はしない。

○光

半地下では太陽光が当たらない。だから長男は庭で日向ぼっこをする『贅沢』を享受する。

地下の家族の夫も、いつでも人が殺せる状況にいながら太陽光にたじろいでいる。陽に慣れていない描写だ。

室内光も大事なモチーフだ。メッセージとして使われているし、地下家族のそのチラつきは半地下家族洪水時のショート

ともオーバーラップする。

○脚

リビングから逃げるお父さんの足の裏は汚れている=貧乏人という事だ。

後半車内で金持ちの奥さんも靴を脱いでいるが、綺麗だしさらにその先は運転手であるお父さんに向けられている。

○石

わかんないです。でも多分責任みたいなものを表していると見ると、最後石が流水の中に置かれたのは一種の禊の比喩なのかなと思う。多義的な解釈を残すモチーフをチェーホフの銃の様に使うってスマートだな!(こればっかり)

○カーセックス

金持ちの夫はカーセックス好きなのだろうか?これを庶民ごっことして見る考察もあったけど、実際にやった事あるんじゃないっすかね。考察がすごいもんカーセックスに対する。まぁとにかく性欲が随所に見られる(地下家族のコンドームとか)のは三つの家族を貫く軸(家族体制には不可欠なわけで)なんだろう。あんな美人な奥さん、気は惹かれるだろうしね……。

 

と色々深読みできるこの映画。面白いしアカデミー賞効果でまだ映画館でやるはずなのでみんな見に行こうね。

 

ちなみにこのあと森美術館の『未来と芸術展』に行ってきた。とりあえず友達と行った方が楽しいよ。インスタレーションって大体そんなんだけど。

個人的には都市計画辺りが面白かった。メタボリズムがアンビルドのままだったのを3Dプリンターとかを使って実際に建てちゃう事がネオ・メタボリズムとして流行ってるのが良かったです。てか3Dプリンターの力って凄いな。

サスティナビリティが叫ばれる中で、それを人間に寄り添う=人間をデータで理解する事で実現するやり口が主に紹介されていて、理解の仕方がファッションだったり建築だったりデータだったり多岐にわたるという面白さがあった。そしてその理解により人間にテクノロジーを適用させどこまでそれが人道的に理解されるのか(AI美空ひばりとかね)そのギリギリを試している楽しさ。いや、わざわざ切り落とした耳を培養されるゴッホが可哀想だったり土着的な迷信をテクノロジーで再現してたり見所は沢山あった。満足。

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Future SUSHI Machine

 

あとはコーヒーとシナモンロールを食べて帰りました。うまー