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言論と暴力の対立

『言論と暴力の対立』と言うのは事件当日の夜のニュースで言われているフレーズだ。

それを見て、「そうなの?」と思った。

まず、暴力と言うのは事件そのものに暴力性があるのでそれはそうだ。

では言論とはなんだろうか?対立というくらいなんだから暴力の矛先が言論だってことなんだろう。しかしこのニュースの時点では容疑者の動機はまだ伝えられていなかった。なので暴力の矛先が言論だったとは断定できない。では凶刃に倒れた(この表現には凶刃も凶弾もある。親切だ)個人が言説のアイコンだったということなんだろう。それは一国の長だった人間だ。生前はめちゃくちゃ言説を操って国を動かしていただろうし、動かす座につく前だってその言説で持ってしてその座を得たのは間違いがない。

ただそれ以前に個人は人間であり、死という事実の前にはすべてが意味をなさない。ここにあって行うべきは、悼むとか偲ぶとかそうでなくても死という結果を見つめることなんじゃないだろうか。ちょうど選挙という言論が最も激しい時期に起きた事件ということもありこういう二項対立が強調されたんじゃないかとニュースを見ながら考えていた。

それから4日ほど経ち、まさにこの言論は暴走している。様々なレイヤーが現実とネットを跋扈しもう何が何やら分からない。その中で事件の動機に宗教の問題が絡んでいるということがわかった。これはおそらく事実だろう。では最初に言った『言論と暴力の対立』というのはなくなったのか?そんなことはなく政治家は「遺志をついで…」と言っている。ここに対立構造は存在する。言論、信条、暴力…テロリズムのテロたる構造がこの事件には詰まっていて、なんだか手を出しにくい。周辺でやんややんやと言っている感じがする。そしてこの情報の速さが現代的だとも思う。もっと昔の偉い人ってのは国が喪に服して華々しい経歴を語り合う、みたいなじっとり浸透していく死のあり方をしているのだと思っていた。でも当時もこんな感じで、事実は伝えられて忘れられてまた新しい情報が出てきて目まぐるしい情勢だったのかもしれない。とにかくこの目まぐるしさは特筆に値すると思う。

 

【追記】

https://www.tokyo-np.co.jp/article/188517
これは東京新聞の社説で、7/98時くらいに出ている。
~主張を封じることが狙いなら、という仮説なので、やはり断定ではない。
http://blog.tatsuru.com/2022/07/08_1344.html
これは内田樹のコラム(原稿を自分のHPに改稿しているもの)。事件後の文章としては最速に近い(7/8の14時くらい)。ここでは二項対立という構図は薄いように思える。言論への諫めが強いが。
https://news.yahoo.co.jp/articles/f1c49c6b9120a5c662aaf1ccab1c539ef72e3de1
沖縄の玉城知事の会見内容。ここでははっきりと対立が示されている。7/819時の記事なのでやはり早い段階から対立構図が出現している
https://www.sakigake.jp/news/article/20220708CO0118/
与野党の反応をまとめた記事。やはり7/8の時点で対立構図が政治家の口から出ている。
https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/470893.html
NHKの当日の解説。けっこう中立的だと思う。

まぁ、やはりおぜん立てがあったということなのだろう。国政選挙中のテロなんて、そりゃ情報がなかったら対立陣営のものだと思うのもわかる。
後は世代間格差だろうか。安保闘争とかで言論と暴力が鍔迫り合いをしていた時代はアラサー以下の世代が思っているよりも近く、生々しい傷跡を残しているのだろう。あさま山荘のデカい鉄球をギャグとして使えるようになったのはつい最近なのだ(そんなおもしろを出す機会があるかは別です)。
そう思うとゼロ年代以降の大規模な凶行は秋葉原の事件からこっち、突然何の前触れもなく起き巻き込まれるもの、という認識が強かったのかもしれない。政治的な信条で起こるメッセージ性の強い事件って若い世代にはあまり馴染みがないというのは事実だと思う(もしくはそういうメッセージが”おもちゃ”として扱われる側面もSNSで露見してきている。障害者施設の事件だってなんだか色々な派閥の自己アピールに吸収されてしまった感もある)。
で、ここにきて事件の動機が宗教2世の問題と絡んできている。このカルト宗教というのもまた80~90年代的だ。アラサー以下はあまりピンと来ていない(N=1)。これらは近年横行する陰謀論との相性がいいのでトンデモ流言飛語もまま見られる。すべてを因果関係に集約していくのはヒトの悪いクセだ。