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RRRを見た(ネタバレなし)

RRRの話をしなければならない。

RRRは一大スペクタクルであり、ヒューマンドラマであり、漢の友情の物語であり、猛々しい獣たちの話であり、受け継がれる神話の話である。

で、RRRを見てきた。場所はHUMAX成田のIMAXだ。レイトショーにふさわしい時間に現地に車をつけ、併設のイオンのフードコートで腹ごしらえをする。時間になるとIMAX専用の入り口から映画館に足を踏み入れる。


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壁一面にそびえ立つという形容がふさわしいIMAXのスクリーン。流石に3時間超えのレイトショーを見る人は少なく、計20人にも満たない観客を前に上映が始まった。

【以降RRR本編のネタバレが含まれません】

冒頭にも書いたがRRRには複数の要素が盛り込まれる。それはわかりやすいストーリーラインにいくつもの既に語られた物語ーー叙事詩、神話の類ーーが巧みに載せられ、その載せられた重みがわかりやすいストーリーラインに深みを与えるという相互作用が起こっているからだ。RRR本編を見ることで観客は複数の神話を体験し、そのことで脳は多大に満足する。

ではある程度史実に則ったストーリーに神話をいかように接続するのか?それは主演二人の肉体によるものだ。彼らの肉体は神話にふさわしく、映画の技術は彼らを神話の世界に投影することに全精力を注がれる。彼らが史実を再現することで(実際はIFの話らしいけど)史実はその形を保ちつつ神性を帯びるのだ。

未見の人がこの映画に持つ印象は、今まで言ってきた神性が最も発揮されたシーンによるものも大きいだろう。ムキムキのインド人が虎と共に飛び出したり、ムキムキのインド人が炎を纏った弓を引き駆けるシーンだ。そのシーンは単体で見るといくらか滑稽だが、神は過剰な力を持つものでその過剰さは神話を理解しないものには滑稽に映る。だから未見の人が滑稽と思っても仕方ないのだ。映画で見ればその神話が十二分に理解できる。

そして未見の人が持つもう一つの印象は、ムキムキのインド人がとにかく踊るというものだろう。これは正しい。作中で踊りは行われる。しかしこの面をことさらに取り上げて『楽しい映画だよ!』と言うのは少し違う。作中の踊りは第一に作中人物の感情を表現する仕掛けになっている。更に言えばインド映画の感情表現は踊りだけでなく濃い。人が驚けばカメラが顔に寄る。人が泣けば頬を伝う涙がスローで描かれる。踊りもその一種だ。そして踊りはもう一つの仕掛けを持つ。観客の気持ちを沸き立たせることだ。踊りのリズムに観客は否応なく乗らされ、乗ったことで作中人物の感情を追体験する。楽しければ楽しいリズム。悲しければ悲しいリズム。そうすることで観客はより物語に没入することができる。

つまり未見の人が『RRRってムキムキのインド人が馬鹿みたいなエフェクトを背負ってめちゃくちゃキレの良いダンスをする映画でしょ。楽しそうだし見に行こう』と思っていたとしても、ムキムキのインド人も馬鹿みたいなエフェクトもキレの良いダンスも、楽しくなるというところを目標に作中に出てくるわけではない。それは頭に入れて見に行くべきだ。その三要素はすべて映画が神話を語る上で必要な仕掛けなのだ…。

ここまで書いて割と満足した。色々と言いたいことはあるけどとにかくRRRは見たほうが良い。この映画はあなたを楽しくさせるものではなく、楽しく、時に悲しく、時には興奮させ最後の最後にエンドロールで満面の笑みと少しの涙を浮かべさせる映画であることは間違いない。

そんなことを考えながら鑑賞後、車で帰る途中でラーメン食べた。美味しかった。


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