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キム・ジへ『差別はたいてい悪意のない人がする』

結構痛烈な本。今までように差別を差別する/されるサイドで語るやり方でなく、社会的な構造の上でこれを語り直し誰しもが差別に加担しているという状況を暴く。韓国社会の現状において書かれた本だが内容は普遍的。
我々は社会的に差別されるうちのどれか1つに属しているのではなく複数に属しており、それ故にAの弱者とBの弱者は同じ弱者カテゴリにいても連帯ができず差別はどんどん人々を分断する。かつ、差別は社会構造と癒着することで再生産される。否定的な固定概念(スティグマ)を内面化する(他者の視点で自分を評価し、それに羞恥心を覚える)と、それが行動に現れその行動は固定概念を維持する方向に働いてしまう(例えば…女性は数学が苦手であるという固定概念により、進学時理系を選びにくくなり、女性は理系に進学しなくなる。結果データ上でもこの固定概念は実証される)。そしてこの差別は構造的な問題かつ本人の選択が行われた結果なため、差別と取られづらい。という指摘はギッとなってしまう。そしてそういう点で自分は「悪意のない人」ですきっと。

そしてまた平等の代名詞である「多文化」という言葉が韓国でジェンダー差別に用いられるという話はうげーとなる例でいかにもインターネットだ。マイノリティはそもそも社会の公共で差別をされているので、平等を促すために際を強調する必要があるとかとにかく痛いところを刺激されまくり、我々は差別をしないための不断の努力を行う必要があると結ばれる。他人の差別の話を聞くと同情までは行かない鈍い痛みを感じているがこの痛みが何なのかを考える必要がある。